ぼくの田舎の話。町内での「要介護者」リスト化→共有は許されるか
【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第三十七回
■要介護者のリスト化は許されるか
これに対して「いや、個人情報保護の観点からまずいです。この資料は受け取れません!」などと反発する気持ちはなく、「なるほど、これが田舎の町内会の良さなんだろうなあ」という感情のほうが大きかった。うちに要介護の年寄りがいることも、近所の人には知っておいてもらったほうがありがたい。
しかし、うちの町内はそれで不都合なく回っているからいいとして、全国的に同じルールが通用するわけではない。
もし、ある町内会長が要介護者のいる家庭をリスト化して、その情報を誰かに配ったことが問題視されたら、どうなるのだろう。町内会長は告発され、厳しく責め立てられるのだろうか。
介護の話題がメディアで取り上げられるときも、しばしば最後は「地域の人たちが協力して、介護の必要な人をサポートする体制を作るのが大切ですね」といった美しい結論にまとめられる。
認知症に対しても同じだ。認知症の人には寛容な心を持って接しましょう、注文をまちがえるくらい大目に見ましょうという暗黙のやさしいルールは、誰が認知症かという情報を共有している中でのみ成り立つ。
これらの情報を持ち合って、地域の人たちが協力してサポート体制を作る方向と、近年の個人情報保護が向かう方向は、矢印がまったく逆向きだ。
要介護者をリスト化し、こっそり情報を渡す町内会の仕組みは、OKなのか、OKではないのか。一度、全国の町内会で話し合ってみる価値はある。